豊島区教育委員会 (東京都)

課題
  • 校務でICTを有効活用したい
  • セキュリティを強化したい
  • 教職員の負担を軽減したい
  • 校務支援システムを導入したい
導入製品・サービス
    • ICT支援員
    • 校務支援システム構築
自治体規模
30校~49校
プロフィール

豊島区教育委員会
〒171-8422 豊島区南池袋2-45-1
https://www.city.toshima.lg.jp/392/kosodate/inkai/iinkai/1506301146.html

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取材日
2015年11月取材

豊島区では、「としま教育の情報化ビジョン(平成24年3月)」に基づき、校務支援システムの導入計画を策定しました。その後、Windows XP のサポート終了に伴い、校務パソコンの入れ替えが必要になったことから計画を再検討。平成25年度中に、学校ネットワークを構築するとともに、校務支援システムを導入することにしました。そこには、限られた予算で大きな効果を得るための工夫があったといいます。導入の経緯と成果について、豊島区教育委員会事務局教育部庶務課庶務担当係長の入澤氏(写真左)、豊島区教育委員会事務局教育部庶務課学校ICTグループの池田氏(同右) 、豊島区教育委員会事務局教育部庶務課学校ICTグループ・政策経営部情報管理課基盤グループの畑氏(同中央)にお話を伺いました。

校務系ネットワークを庁内ネットワークの配下に置いてセキュリティを強化

計画を見直した理由について、入澤氏が説明してくださいました。「平成26年4月のWindows XP のOSサポート終了を機に、校務系ネットワーク(以下:校務LAN)の環境を情報系ネットワーク(以下:庁内LAN)と統合して、その中に校務支援システムを構築することにしました。校務LANと校務支援システムの構築を同じタイミングで行うことで、別々に投資するより大幅に経費を圧縮することができました」。豊島区では、それまで庁内LAN、校務LAN、教育系ネットワーク(以下:学習LAN)の3系統が使われていました。庁内LANの配下に校務LANを構築し、区長部局の情報管理課が持つ情報処理ノウハウを生かすことで、強固なセキュリティ環境を実現することができます。「システム稼働後は、外部メディアからのウイルス検知はゼロになっています。また、先生方の情報セキュリティの意識が高まっています」(入澤氏)。

学校の情報化イメージ

導入実績と研修体制が事業者選定の決め手に

校務支援システム導入の目的は、児童・生徒の学力向上を推進することです。「日々の学習成果や学校活動に伴う各種のデータをシステムで一元管理すれば、より使いやすくなります。教員に積極的に利活用してもらうことで、児童・生徒一人ひとりの学力に応じて、きめ細かく指導することができるようになります」(入澤氏)。

もう一つのねらいは、教員の校務の負担を減らし、教材の研究や授業の準備に費やす時間を捻出して、児童・生徒と向き合う時間を増やすことでした。そのため「担当する事業者には、システムの提案だけではなく、校務支援システムの利活用や教員に対する研修、サポートなど多方面にわたる提案を依頼しました」(入澤氏)。

事業者の選定はプロポーザル形式で行いました。最終的に3社が残り、その中からJMCを選定しました。「決め手は、日本各地で校務支援システムの導入実績があり、学校現場に精通していること。そして、教員に対する研修体制がしっかりしていることでした」(入澤氏)。

校務支援システムの稼働については、すべての機能を一気に全校で稼働させるのではなく、まずは成績処理機能を使ってもらうモデル校を選定。その成果を踏まえて、全校へ展開しました。「校務支援システムを全校で一気に稼働させると、教員が混乱する可能性があります。JMCからは、学校現場に配慮した運用スケジュールを提案してもらっていたので助かりました。先生方が忙しい時期や学校行事をよく分かっているなと思いました」(畑氏)。


電子化により1日あたり約43分の時間を創出。児童・生徒と向き合う時間が増えた

校務支援システムの導入とともに、これまで紙で処理していた指導要録と健康診断票の原本を電子化しました。「ペーパーレス化することで、書類作成にかかる時間を減らすことができ、紛失などの事故も防げます。モデル校でアンケートを取ったところ、一人の教員が1日あたり約43分事務処理の時間を減らせたことがわかりました。その分、児童・生徒と向き合う時間を増やすこともできます。平成27年4月から全校で電子化が本格的に進められていますが、学習指導や生活指導で大きな成果が得られると期待しています」(畑氏)。

▲ 豊島区教育委員会事務局
  教育部庶務課学校ICTグループ
  豊島区政策経営部情報管理課基盤グループ
  畑 奨 氏

教員が新しいシステムを使いこなせるように研修を充実

パソコン操作が得意な教員ばかりとは限りません。成績処理などを電子化することで、学校現場での戸惑いはなかったのでしょうか。「紙と併用するといった経過措置は考えませんでした。パソコンを使わないと業務ができない状況にすることで、すべての教員が使えるようになることを目指しました。もちろん、学校ごとに研修を行うと共に、ICT支援員を派遣してもらい、教員の質問や疑問を解消できるようにしました」(畑氏)。この結果、紙の使用量が減ったと言います。「教員がグループウェア機能の連絡掲示板を積極的に利用するようになり、職員会議などで配付する紙も減ったようです」(畑氏)。

▲ 豊島区教育委員会事務局
  教育部庶務課学校ICTグループ
  池田 健 氏

以前の校務環境では、成績処理を行うパソコンが限られていました。「そのため成績処理を行う時期になると、教員の業務が停滞することもありました。しかし、現在の校務支援システムでは、自席のパソコンで校務LANにアクセスすることができます。『成績処理や通知票作成が自分の都合に合わせてできるので、便利になりました』という教員の感謝の声が届いています」(池田氏)。

運用しやすいデータセンター型がおすすめ

最後に、校務支援システムの導入を考えている自治体や学校へのアドバイスをいただきました。「導入するなら、 行政のネットワークシステムを活用したデータセンター型を選んだほうが便利です」と池田氏。「すべての学校に別々にサーバーを置くと、運用に手間がかかりますし、大きな費用も必要になりますから。また、情報システム部門と連携することで、予算も獲得しやすくなるのではないでしょうか」。

「予算を考えるときに、周辺機器のことまで配慮することが大切です」と言うのは入澤氏です。「システムに合わせて、プリンターなどを新たに導入する必要が出てきます。各校分の周辺機器を揃えるとなると、それ相応の予算を事前に組み込んでおく必要があります」。

また、導入に際して、学校にこまめに情報を提供することも忘れてはいけないと言います。「不確定な情報を伝えても良くないので難しいのですが、決まっているところから随時伝えて、事前に情報を共有しておくことで教員の理解が得られ、稼働後もスムーズに使っていただけます」(入澤氏)。

校務支援システムで成績処理を全校が行うようになって約10カ月。教員がシステムの使い方に慣れてきました。「まずは、現在の機能を使いこなせるようになることが重要です。機能は付加・拡充することができますから、今後は文書連絡機能を強化したり、まだ見えていない学校現場の業務を『見える化』したりすることで、児童・生徒の学力向上を推進していければと考えています」(入澤氏)。

▲ 豊島区教育委員会事務局
  教育部庶務課庶務担当係長
  (教育政策担当、学校ICTグループ)
  入澤 昌利 氏

東京都豊島区について

豊島区
人口
279,302人
児童・生徒数
10,146人
小学校22校/中学校8校 (基準日H27.5.1)

豊島区は、平和の希求、人権の尊重、住民自治の実現を基本的な理念とし、さまざまな人々と共に生き、
共に責任を担う協働・共創のまちづくりを推進しています。
区制施行80周年を機に、ソメイヨシノをモチーフとしたデザインを区のシンボルマークに位置づけました。