秋田県横手清陵学院 (秋田県)
- 課題
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- 校務でICTを有効活用したい
- セキュリティを強化したい
- 導入製品・サービス
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- Hardlockey
- 自治体規模
- 100校以上
- プロフィール
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秋田県立横手清陵学院
〒013-0041 秋田県横手市大沢字前田147-1
http://www.yokote-seiryou.net/
- 印刷用資料
- ダウンロード(PDF:172KB)
- 取材日
- 2007年
秋田県では初めてとなる中高一貫教育校として、また工業系の学科を持つ全国初の中高一貫教育校として、2004年4月に開校した、秋田県立横手清陵学院。「21世紀を主体的に生き抜く人材の育成」を教育理念に掲げ、「豊かな心を持ち、地域への貢献に意欲的に取り組む生徒」「国際感覚を身につけ、主体的に行動する生徒」「情報化社会の進展に柔軟に対応できる生徒」「新技術の開発や活用に積極的に挑戦する生徒」を育てるため、人づくりに通じる「ものづくり」教育を大切にする独自のアプローチを次々と展開し、県内外から注目を集めています。
同校では、開校の準備段階よりHardlockeyの導入を決め、4年目を迎える現在も効果的に運用されています。そこには、同校ならではのセキュリティに対する考え方が実践されているのですが、具体的にどういった内容で、どんな成果が教育現場にもたらされているのかを、今回はレポートいたします。
生徒、教員、事務スタッフ…誰もが自由に使えるネット環境を
「県内初、そして工業系学科を持つ学校としては全国初の中高一貫教育校である特色を存分に活かし、社会の国際化・情報化に対応した教育、人づくりに通じる「ものづくり」教育を大切に、様々な取り組みを展開しています。その成果の一例として、部活などの授業以外の生徒たちの活動で、高校生がPC教室を自主的に開いて中学生にCGを指導するなど、異世代交流の実践の場としても機能しはじめました」と、開校から4年目を迎え、地域や生徒に根付く学校として動き出した、秋田県立横手清陵学院の様子を話す、秋田県立横手清陵学院高等学校の佐々木教頭。
同校では、県内初の中高一貫校として積極的にIT導入を促進。普段の授業から道具としてコンピュータやネットワークが自由に使える環境を構築しています。「高等学校の方には、1部屋に40台設置したコンピュータ室を3室、1部屋に30台設置したCAD室を2室、普通教室にはすべて無線LANを設置し、授業貸し出し用のノートPCを40台、計220台を用意。教員用には生徒用ネットワークとVLAN(※1)で分離して10数台の共用端末を設置。学生や部外者は教務情報などにアクセスできません。他にも事務処理用端末などを整備して、誰もが自由に活用できる環境で運用しています」と、秋田県立横手清陵学院高等学校 総合技術科の加藤先生は、同校のIT環境を説明します。
そんな同校が、生徒、教員、事務スタッフらが、ストレスなくPCを使えることを大前提に、いかに堅牢なセキュリティ体制を築いていくかというテーマに取り組み、その解決策として選んだツールのひとつが、Hardlockeyだったのです。
※1 VLAN/Virtual LAN(バーチャル・LAN)のこと。域内ネットワーク(LAN)において、物理的な接続形態から独立した仮想的な端末グループを設定すること。LANスイッチと呼ばれる機器を活用し、端末の持つアドレスや利用プロトコルなどに応じてグループ化する。
便利なHardlockeyに敢えて縛りを設ける運用体制で
情報取り扱いの厳格化に挑む
実は、同校ではHardlockeyが導入され、2004年4月の開校と同時に活用される予定でした。同校赴任時よりネットワーク運用などを任される情報管理部の中心スタッフとして動く加藤先生は、独自の視点で同校のセキュリティ・ポリシーやルール策定に着手。まず、ツールとして導入されていたHardlockeyを使用する前に、情報教育推進委員会(現:情報管理部)のメンバーで2ヶ月間議論を重ね、最適な運用方法の模索から始めました。
「校内で扱う情報の重要度からセキュリティ・レベルを分けて運用する方向で意見を集め、3つのフェーズを設定。普段の授業で扱う学習系、職員室で行われる授業用の資料作成といった普段の業務系、生徒の成績処理をするといった個人情報系と線引きし、非常に大切な個人情報を取り扱う成績処理に関しては、成績処理専門端末を設置してHardlockey認証で使用する仕組みにしました」(加藤先生)。
いくら高機能で便利なツールがあったとしても、ヒューマンエラーの発生する余地が少しでも想定されるのであれば、絶対にやるべきではない。加藤先生にはこんな強い思いがありました。「個人の成績が万一、漏えいしてしまったら、その生徒の人生を左右することになってしまう。それだけはなんとしても避けなければなりません。そこで、物理的、論理的、空間的にセキュリティをかけ、運用ルールも厳格なものにしました」(加藤先生)。
そこで同校では、まず、物理的・論理的にはHardlockeyでセキュリティを確保。導入した30本のうち10本だけを使い、佐々木教頭の机に置いて、Hardlockeyを使用する際は貸し出し台帳に記入して使うというルールを策定。今、誰が重要情報を取り扱っているのかをシステム側のログ管理だけでなく、必ず佐々木教頭が把握している状態での運用体制を確立しました。
「Hardlockeyのような便利ツールの活用という観点からは、逆行する運用体制ですね(笑)。ただし、情報リテラシーのバラツキが顕著に見られたので、そのボトムアップが進むまでは、たとえ不便であっても厳重な取り扱い体制であることを重視しました」(加藤先生)。
佐々木教頭もこう評します。「本来ならば簡単に使えるセキュリティの仕組みですが、あえてひと手間かけさせてしまって先生方には迷惑をかけていますが、少々面倒でもこういった習慣づけを通じ、取り扱う個人情報の重要さを改めて認識してもらえます」。
空間的には、専用端末のある職員室内スペースでしか作業できないという徹底ぶりです。この、物理的、論理的、空間的な三位一体の運用体制で、多少の不便さを厭わず厳格に情報を取り扱っています。
教員側の利用環境の向上、生徒側の情報教育の底上げ、
両方を支えるツールとして
「県内初の中高一貫校ということで、大勢の関係者が外部から見学に来られます。その中でも情報担当の先生方は、やはりセキュリティ管理を含めたIT環境の整備で頭を悩まされているケースが多いですね。そんなとき、私たちの運用手法とHardlockeyについてお話しすると、非常に興味を持たれます」(加藤先生)。
今後、同校では「効率向上を目標にした業務フロー改革と、成績だけじゃない生徒の個人情報の取り扱いの厳格化」(加藤先生)に向け、より使えるIT環境の整備に着手していく計画があるそう。
そしてなにより「2006年度には初級システムアドミニストレータの資格取得を11名の生徒が果たしました。これは、普段の授業でPCやネットワークを使いこなしているからこそ、という自負があります。それをもう一歩、推し進め、生徒らが調べ学習やCADなどの実習だけでなく、横手清陵学院のオリジナルの情報を世界に向けて発する、“情報発信”というフェーズに高めたい」(加藤先生)とのこと。中高一貫教育のモデル校として取り上げられることの多い同校ならではの先を見据えた取り組みで、これからも積極的に情報教育を推し進めていく様子です。そんな同校を「差し込まなければ使えないというのは、人間の行動パターンにマッチしていて、あまりPCやITに明るくない人間にも使いやすいという印象ですね」と佐々木教頭が評するHardlockeyがカゲながら支援しているのは、言うまでもないでしょう。