東京学芸大学附属小金井小学校 (東京都)
- 課題
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- 授業でICTを有効活用したい
- 導入製品・サービス
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- ICT支援員
- 自治体規模
- その他
- プロフィール
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東京学芸大学附属小金井小学校
東京都小金井市貫井北町4-1-1
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- 取材日
- 2015年2月取材
東京学芸大学附属小金井小学校は、教員養成を主たる目的とした大学の附属小学校として授業研究に積極的に取り組み、その成果を広く教育界に発信しています。また、東京学芸大学の教育実践研究支援センターと連携し、教育の情報化に対応できる教員を養成するための実践的な活動を展開しています。
2012年の夏には普通教室の全室に電子黒板を設置。翌年タブレット端末も導入しました。同小学校では、毎年多くの大学3~4年生が教育実習を行っており、「ICTを活用した情報教育を研究している実習生が有効な研究をするためにも、電子黒板は必要でした」と東京学芸大学附属小金井小学校副校長の関田氏が説明してくださいました。
翌年、ICT支援員(同校では「教育情報化相談員」)も導入しました。「ほとんどの先生方が電子黒板を使うのは初めてでした。教育情報化相談員を導入したのは、ICT機器の使い方の指導とメンテナンスはもちろんですが、それ以上に先生方が授業で活用するときのサポートをしてもらうことが大きな目的でした」(東京学芸大学教育実践研究支援センター准教授・加藤氏)。
授業での活用を推進するためにICT支援員を導入
電子黒板を導入した当初は、プロジェクター代わりに使われることが多かったそうです。「『書画カメラ』で教材を撮影し、電子黒板に映し出して児童に見せていました。それまでPCを使って教材を映していましたから、先生方も使い方に慣れている様子でした。電子黒板を設置したことで、いちいち別室からスクリーンを運ばなくても、すぐに使えるので便利になりました」(関田氏)。
小学6年生の授業を担当する加固教諭も、書画カメラを活用しています。「特に社会科の授業で動画や写真の教材をよく見せます。動画を途中で止めて、ポイントとなる部分を拡大できたり電子ペンで囲んだりできるのが良いですね」。
児童がタブレットにメモした意見を電子黒板に投影
同校に赴任した教育情報化相談員の柳川は、プロジェクターだけではなく、電子黒板やタブレット端末のさまざまな機能を理解してもらうことで、より有効に活用して欲しいと考えました。「先生方にどのような授業をしたいかをヒアリングして、どの機能やソフトを使えば実現できるか研修会を開いて説明しました」。
小学1年生を担当する福田教諭は、授業中にタブレットと電子黒板を連動させたいと考えて、柳川に相談しました。「グループに分かれて話し合った内容を、児童がタブレットに指で書いて電子黒板に送れば、すぐに共有できます。1年生ですから、操作が複雑にならないことが条件でした」。
教育情報化相談員の柳川は、具体的な操作方法を説明。グループの分け方などもアドバイスし、福田教諭と一緒に授業の予行演習も行いました。実際の授業では、児童がICT機器を使うことを楽しんで、意欲的に取り組んでいたそうです。
「教員はICT活用の発想にまだ慣れていません。どうすれば効果的な指導ができるか、教育情報化相談員にアドバイスや提案をしてもらえるのが良いですね。授業中に補佐もしてもらえますし、授業後の感想や改善案が次の授業に役立ちます」(福田氏)。
児童の発言を促し、授業の活性化にも有効なICT機器
ICTの活用により、児童の学習意欲は間違いなくアップしています。「タブレットや電子黒板は、児童に発言を促すツールとしても有効です」と加藤氏。福田氏は「児童が書いたものを集めて黒板に貼る手間を省けるので、授業時間を有効に使える」と言います。
体育の授業では、タブレットで児童一人ひとりの演技を撮影しているそうです。「みんなで見てお手本とどう違うか、指摘しあえます。運動会の準備では毎日のように使っていますね」(加固氏)。同校では、ICTを活用した体育の跳び箱の公開授業も行っています。
相談しやすいようにICT支援員の席を職員室に置く
柳川の出勤日は週2回(火曜・木曜の8:30~17:15)ですが、「もはや学校にとってなくてはならない存在」というのは加固氏。「書画カメラが映らない、音声が出ないといったトラブルにもすぐに対応してもらえますし、校内ネットワークが繋がらなくなったときは、原因究明をしてもらいました」。
附属小金井小学校のネットワークは、東京学芸大学の情報処理センターで運用しています。「大学に問い合わせるとき、何をどう話したら良いかわからないと困っていらっしゃったので、代わりに問い合わせて対応。その後、定期的に先生方にお配りしている『相談員だより』で注意点について報告しました」(柳川)。 関田氏は、教育情報化相談員の席を職員室に置いていることの効果が大きいと言います。「ワードやエクセルの操作など、ちょっとしたこともすぐに質問できます。また、普段から先生方の取り組みを見てもらい、柳川さんからもアプローチしてもらっています」。
「教育情報化相談員がいなかったら、ここまでICTの活用は進んでいなかった」と評価するのは加藤氏。「電源が入らないのはプラグが抜けていたから、といった初歩的な問題の解決から、授業にICTを活用するアイデアの提供まで幅広く活躍してもらっています」。
教育の情報化を研究する実習生と、指導教員の間に立ってサポートするのも教育情報化相談員の大きな役割です。「ICTに詳しい実習生を指導することで、指導教員も非常に刺激を受けています」(関田氏)。
「先生方が安心して利用できるような提案をしたい」
加固氏は、教育情報化相談員のおかげで、「こんなことができるなら、今度使ってみようか」とICT活用を広げることができると言います。「ほかの先生の授業を見学することも大切ですね」。柳川は『相談員だより』を2カ月に1回のペースで発行し、ICTの使い方や教育コンテンツ活用システムなどを紹介。研修会でも事例を報告して情報を共有しています。
附属小金井小学校では、先進的な研究授業が盛んです。「研究授業では特にそうですが、先生方の不安はICT機器のトラブルで授業がストップすること。そのため、万一機器が不安定になった場合にどうするか対応法も含めて提案をすることで、より多くの先生方に安心して活用していただきたいと考えています」(柳川)。
引き続き、教育情報化相談員(ICT支援員)を活用したいという加藤氏。ICT支援員事業を継続するには、成果を出すことが一番だと言います。「公開授業や研究授業を積極的に行うほか、大学での教育情報化プロジェクトで研究発表することも重要だと考えています」。
ICT支援員を機器の「お守り役」にせず、先生と一緒に授業を作ることが大切
最後に、加藤氏からICT支援員の導入を考えている自治体や学校へのアドバイスをいただきました。
「ICT支援員(教育情報化相談員)を機器の『お守り役』だと捉えたり、授業をすべてICT支援員に任せたりするのは良くありません。先生とICT支援員が一緒に活用を考え、授業を作っていくことが大切です。そのためには、先生とICT支援員が交流しやすい環境を整えること。附属小金井小学校がうまくいっている理由は、ICT支援員と先生方のコミュニケーションがよく取れているからです」。