藤枝市教育委員会 (静岡県)
- 課題
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- 授業でICTを有効活用したい
- 校務でICTを有効活用したい
- 子供をネットの危険から守りたい
- 導入製品・サービス
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- ICT支援員
- 学校ネットパトロール
- 自治体規模
- 10校~29校
- プロフィール
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藤枝市教育委員会
静岡県藤枝市岡出山1-11-1
- 印刷用資料
- ダウンロード(PDF:242KB)
- 取材日
- 2013年2月
藤枝市では「教育日本一」を目指して、確実に学力が定着する授業作りや、子供の個性や才能、創造性の育成に向けた特色ある教育などが行われています。その一環として、学校ICT環境の整備と活用にも注力をされ、平成21年度の文部科学省による「スクール・ニューディール」構想では、藤枝市として約5億4000万円の財源を確保。市内の小・中学校に2400台の教育用PCやデジタルテレビなどを導入し、教育の情報化を飛躍的に進めました。
ICT機器が整備された反面で、PC導入当初から多くの学校で操作方法や授業での活用方法、あるいは保守について、質問や問い合わせが教育委員会に多数寄せられました。 「当初は、職員が1人で担当していましたが、他の業務と兼務していることもあり、とても対応しきれませんでした。そこで、ICTに関して高い専門性を持った民間の業者に支援業務を委託することを決め、平成22年11月から小・中学校のICT支援員事業をスタートしました」と、藤枝市教育委員会の森田氏が導入のきっかけを語ってくださいました。
ICT支援員とJMC社員が一体となってサポート
「PCに堪能な先生がいる学校では、授業にICTがよく活用されていたのですが、あまり使われていない学校もあり、教育環境に違いが生じる可能性がありました。ICT活用の標準化を図ることが、導入当初の大きな課題でした」と教育委員会の大場氏。
ICT支援員事業は3年計画で実施され、最後の1年、平成24年4月からJMCが担当しています。
ICT支援員の役割は、ICTを活用した授業サポートと校務の支援。ICT支援員は2名体制で、1人あたり毎日2校に訪問して支援を行っています。JMC社員の役割は、ICT支援員の採用や教育、管理、日々のアドバイス、教育委員会への活動・分析・定例会での報告などです。
「当初、業者が変わることで先生方が戸惑うのでは、という不安がありましたが、杞憂でしたね。JMCは、学校教育市場の専門企業として、積み重ねてきた豊富な実績があります。そのことをすぐに実感しました」(教育委員会・森田氏)
JMCでは、全国のさまざまな自治体でICT支援員事業をお手伝いしています。授業案での活用事例などはすべて蓄積されているので、例えば先生からICT支援員へ活用方法について相談があったときには、JMC社員が適切な事例をICT支援員にアドバイスできます。このような流れで、先生の授業づくりをサポートしています。
一方、実際に学校を訪問しているICT支援員の大内は、「ある先生からPCを使ってビデオ編集を行いたいと相談されたときは、得意分野ではなかったので、JMC社員にすぐに相談。効果的な操作方法などのアドバイスをもらい、授業に役立てることができました。自分一人の経験だけでは対応できないことも、フォローしてもらえるので支援活動を行ううえで助かっています」と、JMCの役割を評価しています。
ICT支援員の日々の活動は、JMC社員が把握。困ったことがあれば、JMC社員がICT支援員を随時サポートしています。また、スタッフWebを通して、全国の自治体で活躍するICT支援員同士がノウハウを共有できる体制もあり、先生方からの質問や課題を解決できる体制を整えています。
手作りの新聞でICTを活用した授業例を先生方に紹介
教育委員会ご担当者と、ICT支援員、JMC社員は、月1回定例会を開いて意見を交換。教育現場のニーズや今後の活用推進の仕方など、課題の解決に努めています。
教育委員会からの学校間のICT利用の差をなくしたいという要望に応えて、ICT支援員が作成しているのが「ICT支援員新聞」です。先生方に配布し、ICTを活用した授業例などの紹介を行っています。「新聞を見た先生が『私もこうした授業をやってみたい』と相談に来られると、うれしいですね」(ICT支援員・大内)。
その結果、社会の授業で企業のWebサイトを見てバーチャル工場見学を行ったり、小学1年生が自分の名札カードを制作し、商品と同じような立派なものを作ったり、小学3・4年生がプレゼンテーションにアニメや音楽を取り入れて、大人顔負けの発表を行うなど、ICT支援員のサポートによりPC活用が進んでいます。
「ICT支援員新聞」では、校務に役立つPCの使い方ワンポイントアドバイスやウイルス対策などの情報も提供しています。
ICT支援員として初めて学校に入って感じたのが、思っていたよりPCを校務に使われている先生方が少ないこと。PCのアプリケーションを使えば、教材プリント作りも楽になり作業の効率化を図れます。先日は、ある先生から相談され、インフルエンザによる生徒の欠席人数の推移が一目でわかるグラフ作りを手伝いました」(ICT支援員・廣田)。
ICT支援員が講師になって、情報モラルの研修会も
定例会では、先生から「情報モラルについて知りたい」という要望が出ていることも話題になりました。ICT支援員はJMC社員と相談し、先生や保護者向けの研修会を開くことにしました。
「事前に先生方にヒアリングし、教育委員会の方々とも相談。JMC社員を主体に内容を詰めていきました。JMCは、他自治体での研修資料やノウハウがあるため、相談から開催まで短期間で物事が進みました」(ICT支援員・廣田)。
こうした業務は、ICT支援員の本来の業務とは異なります。しかし、JMCでは情報モラルについての研修サービスも行っており、ノウハウや情報を豊富に持っているため対応することができます。
「ここでも専門企業としての対応力の幅広さを感じました。安心してお任せすることができましたね」(教育委員会・大場氏)
生徒指導の先生の会議や保護者の集まりなどで情報モラルの研修会を開催。「研修では事前のJMCによるサポートがあったため、自信を持って説明ができました。先生や保護者から、スマートフォンやネットゲームの対応の仕方などの質問が頻出。改めて関心の高さを感じました」(ICT支援員・廣田)
学校ネットパトロールもトライアルで実施
ICT活用とともに、教育現場で欠かせなくなっているのが学校ネットパトロールです。今の子どもたちの友人関係は、昔のように市内や町内にとどまらず、PCや携帯電話と通じて広域化しています。Webサイトへの書き込みが子どもに与える影響も図りしれません。学校裏サイトやプロフをチェックし、問題のある書き込みなどの状況把握をすることも教育委員会として重要になっています。
「自治体独自でプロフなどをくまなくチェックするのは現実的に難しく、これも専門の民間企業に委託するのが、ベストだと感じていました。そこでJMCに相談し、1カ月間トライアル的に携帯ゲームサイト、SNS、プロフなどへの投稿を検索・監視・調査してもらいました」(教育委員会・大場氏)。
「学校でも委員会を立ち上げて対応を始めていますが、今回のトライアルの報告をみると、少なからず問題のある書き込みがあることもわかり、ネットパトロールの重要性をいっそう認識しました。トラブルの抑止力の一つとして、今後の導入を検討したいと考えています」(教育委員会・森田氏)
「ICT支援員は100%必要」という先生方の声
ICT支援員の活動に対して、先生方はどのように評価しているのでしょう?
「全教員に年1回アンケートを実施していますが、結果を見ると明らかです。ICT支援員配置の必要性について質問したところ、100%の学校がICT支援員の必要性を感じています。これは先生がICT支援員を高く評価していることと、ICT活用の有効性を感じていることの表れです。先生の要望としては、校務の支援もそうですが、授業における支援をより強く求めています。授業での効果的な活用例を教えてもらい、自分でも取り入れたいというニーズがますます高まっています」(教育委員会・森田氏)
ICTの活用推進は継続性が大切という森田氏。「IT技術や利用がどんどん進み、社会状況は常に変化しています。それに対応するためにも、教育委員会としてはICT支援員事業を続けたいのですが、ネックとなるのが財源です。国や県の補助金があれば続けられますが、藤枝市のような中規模都市が単独で継続するのは難しい面があります。そのため、将来は近隣の自治体と一緒に取り組めたらと考えています。例えば、学校ネットパトロールを共同で実施することを呼びかけているのですが、そのきっかけにつながればと期待しています」
教育の情報化がICT機器整備と利活用の両面でバランスよく進みつつある藤枝市。「教育日本一」を目指した学校環境の整備がより一層進もうとしています。